萎縮性胃炎・慢性胃炎・急性胃炎

胃炎とは

胃炎とは胃粘膜に炎症を起こす胃炎は、急性と慢性に分けられます。急性胃炎はアルコールの過剰摂取や食べ過ぎなどで生じることが多く、慢性胃炎はピロリ菌感染が主な原因となっており、次いで非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs/解熱性鎮痛薬)などの薬の副作用として起こることが多いです。胃炎発症には他にも喫煙やストレスなどの関与も指摘されています。ピロリ菌感染による慢性胃炎は、ピロリ菌の除菌治療を成功させることで再発率を大きく下げることができますので、胃がん発症リスクが上昇する萎縮性胃炎に進行させないためにも有効です。
なお、胃炎の症状は胃がんをはじめとした多くの胃疾患と共通しています。胃がんは早期には自覚症状がほとんどなく、進行しても軽い胃炎のような症状しか起こさないことがあるため注意が必要です。胃がんは早期に発見できれば楽な治療で完治が期待できる疾患です。胃の症状や不快感、違和感が続く場合にはできるだけ早くご相談ください。

胃炎症状を軽減し
再発を抑える治療

胃炎症状がある場合、胃粘膜の炎症や潰瘍から胃がんまで、様々な病気の可能性があります。また、炎症などの病変がなく症状がある場合には、胃の機能低下や知覚過敏などが原因となって生じる機能性ディスペプシアが疑われます。症状だけでは診断できませんので、症状がある場合には受診して検査を受け、確定診断に基づいた適切な治療を受けることが重要です。
なお、胃粘膜の炎症が長期間続くと胃がんリスクの高い萎縮性胃炎に進行する可能性がありますので、再発予防を視野に入れた治療が不可欠です。ピロリ菌感染陽性の場合、胃炎を繰り返しやすいですが、除菌治療に成功することで再発リスクを下げることができます。萎縮性胃炎に進行させないためにも感染が疑われる場合には早めに消化器内科を受診してください。
また、機能性ディスペプシアは病変がないことから以前は神経性胃炎と診断され、適切な治療を受けられなかった方の多かった疾患です。現在、消化器内科では機能性ディスペプシアの診断と症状緩和や軽減につながる治療が可能になってきています。当院では消化器内科の専門性の高い診断と治療が可能ですので、お悩みがありましたらご相談ください。

胃炎の主な症状

急性胃炎

  • 胃やみぞおちの痛み
  • 胸やけ
  • 吐き気・嘔吐
  • 膨満感
  • 腹部不快感
  • 黒く粘り気の強いタール便 など

慢性胃炎・萎縮性胃炎

  • 胃やみぞおちの痛み
  • 胸やけ
  • むかつき
  • 吐き気・嘔吐
  • 胃が重い
  • 膨満感
  • 食欲不振 など

慢性胃炎と萎縮性胃炎は現れる症状に違いがなく、慢性胃炎で軽度の症状しか起こさないまま進行し、萎縮性胃炎になっても強い症状を起こさないこともあります。また、炎症・潰瘍・がんなど原因にかかわらず胃の症状は市販薬でも緩和できることから進行させてしまうケースがあり注意が必要です。
なお、胃がんになった、あるいはピロリ菌感染陽性の家族がいる場合はリスクを考慮して、症状が特になくてもピロリ菌感染や炎症の有無を調べておくことをお勧めしています。

胃炎の種類・原因

急性胃炎

強い刺激によって胃酸分泌が過剰になり、それによって急性の炎症を起こしています。アルコールの過剰摂取によって生じるケースが多く、他にはカフェインや唐辛子などの過剰摂取などが原因で生じることもあります。また、疲労や睡眠不足、ストレスなどから消化管の機能をコントロールしている自律神経のバランスが崩れ、それによって胃酸分泌過剰などの機能不全を起こし、急性胃炎を発症することもあります。

慢性胃炎

ピロリ菌感染

慢性胃炎のもっとも多い原因にピロリ菌感染があります。ピロリ菌は強い酸性の胃酸や消化酵素のある胃の中でも生存できる細菌です。ピロリ菌はウレアーゼという酵素によって周囲の尿素を分解してアルカリ性のアンモニアをつくり、周囲を中和しています。ピロリ菌がつくるアンモニアなどの毒素が胃粘膜にダメージを与え続けることで炎症が慢性的に続くとされています。

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非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs/解熱性鎮痛薬)の副作用

幅広い病気の治療薬として処方されており、市販薬にも成分を含むものが多い非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs/解熱性鎮痛薬)をはじめ、胃炎の副作用を持つ薬はたくさんあります。長期間の服用だけでなく、数回の服用で強い胃炎や潰瘍を生じることもあります。薬を飲みはじめてから胃炎症状が現れた場合には、速やかに当院までご相談ください。

萎縮性胃炎

慢性胃炎が進行すると修復能力を超えたダメージが蓄積され、胃粘膜が薄くなる萎縮性胃炎になる可能性があります。萎縮性胃炎が進行すると腸上皮化生を起こして胃粘膜が腸粘膜のようになってしまい、一部ががん化して胃がん発症につながるとされています。慢性胃炎は一度炎症を治しても再発を繰り返すことが多いため、再発防止を意識した治療を行うことが重要です。

機能性ディスペプシア

胃痛、胸やけ、胃もたれ、早期満腹感、つかえ感などの慢性的な症状がありますが、粘膜に炎症などの病変がない状態です。以前は神経性胃炎と診断され効果的な治療を受けられず、つらい症状に長くお悩みの方が多かったのですが、現在では消化器の機能や知覚過敏が発症に関与していると考えられており、消化器内科の専門的な治療によって改善が見込めるようになっています。消化器の機能は自律神経がコントロールしていますので過労や睡眠不足、ストレスなどが症状に影響します。

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萎縮性胃炎と胃がん

胃粘膜は常に強酸や消化酵素にさらされていますので防御機能や修復機能を備えていますが、炎症が長期に渡り能力以上のダメージを受け続けると胃粘膜が薄くなる萎縮性胃炎に進行します。萎縮性胃炎が悪化すると胃粘膜は腸上皮化生を起こして腸粘膜のようになっていき、その一部ががん化して増殖し、胃がんを発症するとされています。萎縮性胃炎は胃がん発症リスクの高い状態であり、炎症の進行を止めて再発を予防し、定期的な検査が必要です。
ピロリ菌陽性の場合には除菌治療が有効です。ピロリ菌検査陰性でも胃カメラ検査で粘膜の状態をしっかり確かめることが重要です。なお、除菌に成功することで胃がん発症のリスクは下がりますがゼロになることはありません。ピロリ菌に感染したことがない方に比べるとリスクが高い状態ですので、定期的に胃カメラ検査を受けることが重要です。

胃炎の検査

内視鏡検査急性胃炎の場合、主な原因となる飲酒や食事、薬服用などについて問診で確認し、原因と症状の内容、体質などに合わせた治療を行います。問診ではっきりとした原因がわからない場合には、胃カメラ検査で粘膜の状態を把握し、原因疾患の有無を確かめて状態に合わせた治療を行います。
慢性胃炎の場合には、問診後に胃カメラ検査を行って粘膜の炎症など病変の有無や程度、範囲を確かめ、検査で採取した組織を使ったピロリ菌感染検査や病理検査により確定診断を行い、適切な治療につなげます。
当院では、内視鏡検査の研鑽を重ねてきた専門医が高度な最新機器を使って丁寧な胃カメラ検査を行っており、患者様の心身への負担を最小限に抑えるために鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を実現しています。

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胃炎の治療

胃炎の治療胃粘膜の炎症による症状は胃酸分泌抑制薬をはじめとした薬物療法で比較的短期間に緩和・解消が可能です。ただし、症状が治まっても粘膜の炎症が完全に治るまで服薬を続けないと再発を繰り返して悪化させてしまいますので注意が必要です。
ピロリ菌感染陽性の場合は特に胃炎を繰り返しやすいですが、除菌治療に成功することで再発率を下げることができ、胃がん発症リスクを下げるためにも役立ちます。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs/解熱性鎮痛薬)をはじめとした薬の副作用で胃炎が生じている場合には、処方を変更することが最も効果的な治療法です。ただし、処方の変更が難しい疾患もありますので、その場合には消化器内科で胃粘膜の状態をコントロールする治療を受けながら服用することで症状やダメージを最小限に抑えることができます。
なお、胃炎症状は食事などの生活習慣やストレスによって発症・悪化しやすい傾向がありますので、症状悪化や再発を防止するために生活習慣などの見直しが必要になることもあります。

薬物療法

基本的に胃酸分泌抑制薬を処方し、状態に合わせて粘膜保護薬などを組み合わせます。市販薬でも症状の改善効果のあるものはありますが、医師処方の薬は状態にきめ細かく合わせることで症状緩和・解消に加え、粘膜の状態を回復させ、機能を整えるといった効果にもつなげています。市販薬で症状が治まるからと受診が遅れ悪化させてしまわないためにも、症状が繰り返し起こる場合には早めに当院までご相談ください。

ピロリ菌の除菌治療

除菌治療では、2種類の抗菌薬と、その作用を高めるための胃酸分泌抑制薬を1週間服用します。ピロリ菌は抗菌薬に耐性を持つケースがあり、除菌治療の成功率は70~80%とされています。なお、除菌治療の成功判定は、服薬終了後一定期間をおかないと正確な結果を得られません。成功した場合には除菌治療終了ですが、失敗した場合には抗菌薬を1種類変更して2回目の除菌治療が可能であり、1回目と2回目の除菌治療を合わせた成功率は97~98%とされています。
ピロリ菌感染検査と除菌治療は保険適用されますが、その条件として胃カメラ検査が必須となります。胃カメラ検査で胃炎など指定された病気の診断を受けた場合、採取した組織を用いたピロリ菌感染検査が保険適用され、その検査で陽性になった場合は除菌治療も2回まで保険適用となります。

生活習慣の改善

過度の飲酒や食べ過ぎ、カフェインや唐辛子の過剰摂取、喫煙などは、胃炎の発症リスクを高めます。炎症との因果関係が認められる場合には生活習慣の見直しも重要となります。また、消化器の機能をコントロールしている自律神経のバランスを崩さないために、休息や睡眠をしっかりとって、ストレスを上手に解消するよう心がけましょう。

ピロリ菌感染について

ピロリ菌は井戸水などを介して経口感染すると考えられています。感染が起こるのは、免疫や胃酸がまだ弱い幼少期であり、成人してから感染することは稀とされています。
上下水道が完備された先進国では感染者数が減少していますが、日本は例外的に感染率が現在も比較的高く、高齢者の80~90%、若い世代でも20%程度が感染しているとされています。ピロリ菌は、除菌治療に成功する、または胃粘膜の炎症が悪化して生息できない環境になってしまうまで排除できません。
除菌治療に成功すると、胃炎の再発率が大幅に下がることから、胃がん発症リスクの高い状態への進行を抑えられます。ただし、成功して胃がんリスクが下がってもゼロにはなりません。ピロリ菌感染したことがない方に比べると胃がん発症リスクは高い状態ですので、定期的な胃カメラ検査が必要です。

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